ポリエステル生地の特徴は?用途・扱い方・他の生地との違いも

ポリエステル生地の特徴は?扱い方を知って上手に取り入れよう!

まりや

ポリエステルと聞くとプラスチックを思い浮かべるかたも多いかもしれませんが、お持ちの衣類の組織表示を見てみると、そこには「ポリエステル」と表記されているかもしれません。実は繊維としてもとても幅広く使用され、日本の衣類を支えていると言っても過言ではないほどです。今回はそんなポリエステルについて詳しく調べてみましょう。

ポリエステルの生地は何からできているの?

ポリエステルの生地は何からできているの?

ポリエステル繊維の主な原料は石油です。石油を細かく分離していき、最終的に小さなチップへ加工します。チップになったら高熱で液体状に溶かし、穴の開いた細いノズルに通して空気冷却させながら、糸状の個体にさせて加工することにより、ポリエステル繊維の完成となります。

溶かすときに使用するノズルの形を変えることで、様々な形を作ることも可能で、幅広い加工の仕方があるのがポリエステルです。このように人工的に作られた繊維を化学繊維と呼び、アクリルやナイロンもそのうちのひとつです。

そのなかでもポリエステルは生産量、使用料が最も多い繊維で、衣類の半数近くがポリエステル製といえるでしょう。工業的な生産が始まったのは1953年で、アメリカのデュポン社が「ダクロン」という名称で製造を始めました。材料の入手が簡単なため、天然繊維と比べるとかなり安価となり、さらには加工の仕方でいくつもの可能性が見い出せたため、ここまで普及することができた優れた繊維なのです。

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ポリエステルの特徴は?

ポリエステルは生地として大変優れていますが、気をつけなければいけない面もあります。扱い方を間違えないようにどんな特性があるのかチェックしておきましょう。

メリット

ポリエステルの特徴は?

とにかく丈夫

ポリエステルの最大のメリットとなるのが、その生地の強さです。耐久性にとても優れているので、衣類が着崩れをあまり気にしなくても大丈夫です。そのため洗濯もしやすいのが特徴で、洗濯機に何度かけてもへたりにくく扱いやすい生地といわれています。

乾きやすい

ポリエステルの性質に吸水性の低さがあります。実はポリエステルは汗を吸いにくいのですが、速乾性があるので乾きやすいという変わった特徴があります。

ポリエステル繊維だけを見れば、通気性もよくないので蒸れやすくなり、スポーツウエアなどには向いていない素材なのですが、特殊な構造で生地を仕上げることによりデメリットをカバーし、乾きやすさを実現した素材になっています。吸収した水分の乾きの速さは素晴らしいので、洗濯後もいち早く乾くのがポリエステル生地です。

虫食いに強い

衣類は長期保管すると虫食いにあいやすく防虫剤が欠かせませんが、ポリエステルは化学繊維のため虫がつきにくい特性があります。天然素材のシルクやカシミアというのは、虫が好んで食べるため穴が開いてしまう代表的な生地ですが、ポリエステルをはじめとする化学繊維は、虫食いにあう可能性は極めて低いのです。

ただ、食べこぼし跡や皮脂汚れが付着したまま保存していれば、それを餌として虫が寄ってきてしまいますので、清潔に保つことが前提です。

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シワになりにくい

ポリエステルはシワができにくい素材です。そのためほとんどの衣類がノーアイロンでも見栄え良く着用することができます。伸縮性があるのでシワがつきにくく、洗濯後は干している重みだけでシワを伸ばすことが可能です。そのため、ノーアイロンをうたうワイシャツやブラウスなどはポリエステル製が多く、アイロンの手間が省けるので人気商品となっています。

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熱に強い

ポリエステルは耐久性に優れていて、さらに高温にも強くなっています。そもそもシワができにくいのでアイロン自体必要ないかもしれませんが、かける場合は1番高い温度を避ける程度の配慮で大丈夫です。ただし、物によってはデリケートな場合もあるので、洗濯表示を確認して、必要であれば当て布等の対応をしましょう。

また、化学繊維はドライアイロンが向いている素材ですので、スチーム機能はオフにして使用しましょう。スチーム機能を使用しても大きな問題はないですが、失敗するとシワをつくってしまう可能性もあるので、要注意です。

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リーズナブル

ポリエステルの大きなメリットは、その価格の安さです。天然繊維はどうしても高価になってしまい、気に入ったデザインの衣類でも、なかなか手が出せないことがあるかもしれません。それに比べポリエステルは購入のハードルが低く、汚れや破損で着れなくなっても新調しやすい気軽さがあるので、ヘビロテしやすい衣類でもあります。お気に入りが見つかれば色違いで揃えるなんてこともしやすいですよ。

デメリット

ポリエステルの特徴は?

火には弱い

高温に強いポリエステルですが、火には弱くすぐ燃えてしまいます。フリースを着て油料理をしていたら引火してしまった、というニュースを見たことがあるかたもいるかもしれません。ポリエステル100%でできている衣類はかなり燃えやすく、火がつくと一瞬で燃え出し、溶けるようにぽたぽたと繊維を垂らします。原料が石油のため高温で燃えてしまいますので、火の扱いには要注意です。

静電気の温床

ポリエステルのメリットに速乾性がありましたが、それは吸水性が低いことからくるものでした。静電気は湿度が低いと起きやすいため、冬場によく発生しますよね?そのため水分をためておけないポリエステルは、衣類のなかでも静電気が起きやすい素材なのです。

さらに、衣類の素材は帯電のしやすさがプラスかマイナスかに分かれていて、プラスとマイナスのものを着合わせるとさらに発生しやすくなります。ポリエステルはマイナスの性質を持つので、プラスの性質を持つウールなどと合わせると静電気の温床となってしまいます

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毛玉ができやすい

耐久性があるので破れにくい素材ですが、毛玉ができやすいというデメリットがあります。これは繊維が丈夫なゆえの性質で、繊維が一度絡まると固く結ばれなかなか離れなくなり、毛玉となってしまうのです。

最近はニット素材にもポリエステルが含まれていますが、それは特に着用回数や洗濯回数が多いほど毛玉ができやすくなってしまいます。そのため、見た目の面から衣類としての寿命が短くなる場合があります。なるべく摩擦が起きないように気をつけましょう。

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色移りすることがある

基本的にポリエステルは色落ちや色移りがしにくい素材と言われてていますが、長時間水に触れている状態は危険です。濡れた傘を干し忘れて放置してしまったときに、「たたまれていた部分が変色していた」なんて経験はないでしょか?

洗濯時も、基本は吸水性がないので心配はないのですが、水に浸けたままの時間が長いと、色移りの可能性があります。また、長期保管中は、色の薄いポリエステル生地と色の濃い衣類を重ねておくのも、あまりおすすめできませんので、心配な場合はタオルを挟むなどの対処をしましょう。

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汚れが落ちにくい

ポリエステルは洗濯時にも水の吸収が悪いので、すぐには汚れが落ちません。また、色が薄いポリエステル生地ですと、汚れのひどいものと洗うとその汚れを吸収してしまう「逆汚染」という現象が起こる場合もあります。

汚れがひどいものとは一緒に洗わないように心掛け、長時間の洗濯は避けましょう。それで汚れが落ちない場合は、ポリエステルは薬品に耐性がありますので、汚れがよく落ちる弱アルカリ性の洗剤で洗うようにし、気になる汚れにはダイレクトに洗剤を塗ってしまいましょう。

アレルギーが出る場合も

ポリエステルにアレルギー反応を起こしてしまうかたが稀にいます。ポリエステル製の衣類を着ているとかゆみが出たり、赤く炎症を起こしたり、くしゃみや目のかゆみなど症状は幅広く、もともとアレルギー体質のかたは注意しましょう。アレルギーが出た場合は化学繊維は避けて、天然繊維を選ぶと症状が改善される場合が多いようです。症状がひどい場合は自己判断せずに、医師の指示を仰ぐようにしましょう。

ポリエステル生地と他の生地の違い

ポリエステル生地と他の生地の違い

ポリエステル生地とほかの生地にはどのような違いがあるのでしょうか。使用する場面や目的を間違えないように、しっかりとチェックしておきましょう。

ポリエステルに似ているナイロン

ポリエステルのよく似ている素材が「ナイロン」です。ポリエステルの次に生産量が多いといわれるナイロンですので、きっとご家庭のクローゼットにもあるはずです。ただ、ポリエステルとナイロンを見た目だけで見分けるのは大変難しく、素人は特徴を細かく比べていかなければわからないでしょう。

触った感触ではナイロンのほうが柔らかくしなやかなので、衣類を扱う職業のかたは感触だけで違いが分かるかもしれません。特性の違いは、ナイロンは染色しやすいので色のバリエーションが多く、耐久性も若干ナイロンのほうが上です。しかしその分ポリエステルは価格が安く、加工の幅が広くなっています。どちらが良いかは、デザインの好みでしか分けられないのではないかというほど似ている素材です。

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天然繊維との違い

1番大きな違いは、天然繊維は動物や植物から作った繊維で、ポリエステルは化学的に作られた化学繊維というところです。アレルギー体質のかたや肌が弱いかたには天然繊維がおすすめですが、扱いが難しくものによっては大変高価になります。

その点ポリエステルは、型崩れやシワを気にせず着用でき、洗濯も家で簡単にできてしまうので、面倒な手間がいりません。また、ポリエステルでしか作れない衣類というのもあるので、どちらも必要な生地となっています。

実は天然繊維と化学繊維の混紡が多い

繊維は大きく分けると化学繊維と天然繊維に分かれますが、実はこの2つを組み合わせた混紡繊維の衣類が多く出回っています。これは、お互いのデメリットを補いあい、メリットを伸ばすことができる製法で、衣類の寿命を長持ちさせることに成功しています。特に多いのが綿とポリエステルの組み合わせで、型崩れしにくく乾きやすく、綿の優しい質感のある衣類に仕上げることができます

ポリエステル生地の用途

ポリエステル生地の用途

ポリエステル生地が使用される商品

衣服

ポリエステル生地の代表は衣類で、速乾性と伸縮性があるためスポーツウェアなどにもよく使用されています。シワができにくいのでアイロンがけの時間が短縮できるので、ポリエステルが入っている衣類は重宝されています。また、大量生産がしやすいので、ファストファッションでも多く取り入れられていますよ。

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帽子

熱がこもりやすく蒸れやすい帽子ですが、ポリエステル生地にすることで、汗をかいてもすぐに乾き快適にかぶることができます。また、日常的に使用しても丈夫ですので寿命も長く、日に当たっても傷むことが少ないのがメリットです。学校でかぶっていた体操帽も、ポリエステル生地のものが多いです。す。

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バッグやリュック

カバン全般に求められるのが強度で、それに最適な生地がポリエステルです。型崩れしにくいので、通勤や通学で毎日使用しても劣化があまり目立ちません。また、リュックの場合は背中との蒸れが心配されますが、ポリエステルならその悩みも必要ありません。

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毛布やシーツなどの寝装品

メリットの速乾性が重宝するのが寝具です。毛布、シーツ、枕カバーなどはダニが繁殖しやすい場所ですが、ポリエステル生地にすれば湿度を低くすることができるため、ダニ予防にもなります。また、夏場などはサラッとした感触で寝ることができるので、清涼感も味わうことが可能です。さらに伸縮性もあるので、身体にフィットする感覚も心地良いです。

傘やテント

傘の素材は特殊で、主に加工されたポリエステルやナイロンが使用されています。とくに吸水性の低いポリエステルのほうが人気で、雨もよくはじいてくれますよ。同じ理由からテントもポリエステル生地が多く、耐久性もあるのでまさにキャンプにぴったりの素材です。

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テーブルクロス

食べこぼしや飛びはねが気になるテーブルクロスは、撥水加工をしたポリエステルの生地がおすすめです。簡単な汚れならさっと拭くだけで落ちますし、洗濯も気兼ねなく洗濯機で回してしまうことができます。さらに、シワもできにくいのでアイロンがけが不要です。

ポリエステルのカーテンやカーペット

ポリエステルは光沢がある繊維で、カーテンの滑らかさを演出することができます。シワになりにくく丈夫で、日光にも強いという特性もカーテンにぴったりなため、多くのカーテンがポリエステル製です。また、カーペットは頻繁に洗うことが難しいためダニの温床となりがちですが、ダニはポリエステルを基本的には餌としないため、天然繊維のものよりダニの繁殖を抑えられ衛生的です。

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ポリエステルがおすすめの季節

ポリエステルは加工のバリエーションが豊富なため、1年を通して着用できる素材です。夏場は汗を吸収して乾かす特性に優れた構造の服が売られていますし、冬はウールを混ぜたコートやセーターなどとなって、着用することが可能です。季節に合った衣類に変化できるポリエステルは、やはり優れた素材ですね。

ポリエステル生地の扱い方

ポリエステル生地の扱い方

洗濯表示を確認する

「ポリエステルはガンガン洗濯してしまって大丈夫!」ということでしたが、混紡繊維だった場合や加工の仕方によっては注意が必要ですので、洗濯表示を確認する癖はつけておきましょう。“洗濯洗い”や”手洗い”マークがついていればご家庭で洗濯可能ですので、注意して確認してください。

最近ではポリエステルでもナイーブなつくりになっているものがあり、”水洗い不可”のマークがついている場合もあります。そのような衣類は見た目からして繊細そうになっていることが多く、装飾品がたくさんついているかなども判断材料となります。

また、水洗いOKの場合でも、おしゃれ着洗いをしなければいかないかもしれませんので、「ポリエステル=弱アルカリ洗剤でOK」とはせずに、使える洗剤の種類も確認するようにしましょう。

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洗濯時の水の温度は30℃以下

ポリエステルは丈夫で高温にも耐えることが可能ですが、お湯で洗ってしまうとシワシワになってしまったり、最悪の場合縮むことも考えられます。そのため、お風呂の残り湯などを使用するときは温度に気をつけて、30℃以下のぬるま湯になってから使用するようにしましょう

ぬるま湯程度なら洗剤も良く溶けて洗浄力が上がり、ポリエステルの汚れも落としやすくなります。また、ポリエステルは静電気がたまりやすいので、柔軟剤を使用すると、静電気の防止にもつながりますのでおすすめです。

革ものとは密着させない

色落ちしにくい素材として有名なポリエステルですが、革からの色移りは強烈ですので気を抜かないようにしましょう。特に濡れている状態は色移りしやすいので、雨の日に革製のカバンを衣類にこすってしまったり、革がついた衣類と一緒に洗濯をするようなことがよう注意してください。

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ポリエステルは使い勝手抜群の生地!

ポリエステルは丈夫で速乾性があり、年間を通して着用することができるという万能な生地でした。利用方法も幅広く、使い勝手が良いのでこれだけ身の回りにあふれているんですね。デメリットも把握した上で利用すれば、ポリエステルを賢く利用することができますよ。