セーターやニットに欠かせない素材である「ウール」ですが、そのウールが持つメリットやデメリット、特徴には、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、ウールの特徴や種類、アクリル素材との違い、また洗濯する際の注意点なども合わせてご紹介します。
目次
ウール素材の特徴
ウールって何?
冬物衣料に欠かせないウールですが、ウールとは「羊の毛」のことを言います。天然繊維に分類され、羊の種類によって毛質が異なるため、ウールの中でも繊維の細さによりランク分けされています。
メリノウールとは
一般的にウールといえば、メリノ種の羊毛のことをいいます。メリノウール素材は、最も高級とされるウール素材で、最高品質を誇り、柔らかく光沢感があります。細く繊細な繊維は、衣料用に使われることが多いです。
メリノウールの種類
メリノウールは、「フランスメリノウール」「オーストラリアメリノウール」「ニュージーランドメリノウール」の3種類が有名です。
特にオーストラリアは世界最大の羊毛生産国です。世界中で生産されている羊毛のうち、約40%がオーストラリア産であり、その中の約70%がメリノウールです。
では、それぞれのメリノウールがどのようなものか、詳しくみていきましょう。
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- フランスメリノウール
メリノウールの中でも、最も人気があるのがフランスメリノウールです。フランスの限られた地域で飼育されている羊を使用したもので、現在生産量が少なくなり、希少性が増しています。
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- オーストラリアメリノウール
世界最大の羊毛生産国で作られるオーストラリアメリノウールは、その白さが際立つものです。繊維が長く、質感も柔らかいので、高級素材とされています。
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- ニュージーランドメリノウール
ニュージーランドメリノウールは、柔らかい質感を持つウールです。ニュージーランドの山岳地帯のみで飼育されている羊の毛を使ったもので、オーストラリアメリノウールより、生産量が少ないとされています。
ウールとアクリルの違い
羊の毛で作られた天然繊維のウールに対し、アクリルは人工的に作られた合成繊維です。アクリルニットも肌触りが良いため、ウールと同じように見えてしまいますが、やはり大きな違いがあります。
保温性
アクリルも保温性や耐久性がありますが、やはり温かさはウールに劣ります。
吸湿性
吸湿性があり、汗をかいたら水分を蒸発させて快適な着心地となるウールに対して、アクリルには吸湿性がないので、汗を吸いません。そのため、ニットを着て汗をかいたら蒸れたり汗冷えしたりして、風邪をひいてしまうこともあります。
虫食いの心配がない
ウールは天然たんぱく質でできているため、虫食いの心配がありますが、アクリルは合成繊維のため、虫食いの心配がなく、カビの影響を受けません。
長い間保管していても、虫食いやカビの心配がないので安心ですし、簡単な手入れで長く着ることができます。
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値段
「ニットでおしゃれしたいけど、手頃な値段がいい!」という方には、アクリル素材がおすすめです。やはり、ウール素材はアクリル素材よりも高価なため、何着もそろえるのは難しいかもしれません。
その点アクリル素材は財布に優しい価格帯で購入することができるので、おしゃれを思う存分楽しむことができます。
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ウール素材のメリット
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- 保温性・伸縮性
ウール素材のメリットといえば、なんといっても保温性と伸縮性でしょう。ウールの繊維にある縮れ(クリンプ)がたくさん空気を含んで、そこに毛が絡み合っているので保湿効果が高く、また優れた伸縮性も持ち合わせています。
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- 型崩れしにくい
ウール素材には、高い弾力性・回復力があるため、型崩れしにくくシワになりにくいと言われています。そのため、シワになったとしても他の素材よりも簡単に戻すことができます。
シワになった部分に蒸気をあてるだけで元に戻るので、長く着続けることができます。
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- 汚れがつきにくい
ウールは撥水性に優れた素材であるため、汚れがつきにくいというメリットがあります。雨、水滴、泥などといった水溶性のものをはじくため、他の素材と比べても汚れにくいといえます。
また、抗菌、防臭効果にも優れており、臭いが気になる人にはおすすめの素材です。
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- 夏でも涼しい
ウールというと、冬に着るものというイメージがありますが、実は夏でも涼しく感じさせてくれます。
ウールは多くの空気を含んでいるため、空気中にある湿気を吸収します。そして、吸収した水分を蒸発するときに、気化熱が奪われ、涼しく感じるという仕組みになっています。
そのため、夏でも着ることができ、汗をたくさんかいても湿った感じがせず快適に過ごせます。
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- 土に還すことができる
ウールはもともと羊の毛からできた天然素材のものです。そのため、土に埋めると微生物がウールを分解するので、土に還すことができます。世界中でエコが叫ばれている中、ウール素材を使った衣類は、とても地球にやさしい衣類となります。
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- 静電気を防ぐ
もともとウールは帯電しにくいという性質があります。そのため、冬に発生しやすい静電気を起こりにくくし、ホコリやゴミもつきにくいという特徴があります
これは、ウール素材の繊維内部の保水率が高いためです。
ウール素材のデメリット
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- 毛玉ができやすい
ウール素材は他の素材に比べて、毛玉ができやすいというデメリットがあります。
ウールは繊維がうろこ状になっているという性質上、どうしても毛玉になりやすく絡みやすいこともあり、ひどい場合はフェルト状になることもあります。
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- 虫食いに遭いやすい
羊の毛で出来ているウールは、天然のたんぱく質でできている素材です。土に還る、ということからも分かるように、他の素材に比べて虫食いに遭いやすい素材なので、保管する場合には「防虫剤」を入れるなど、虫食い対策をする必要があります。
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- 洗濯でダメージを受けやすい
ウール素材は、洗い方が難しい素材のひとつです。水の影響を受けやすいため、洗い方や水温を間違えると、縮んでしまう恐れもあります。洗濯をする際には、十分に注意しましょう。
また、なかには家庭では洗濯できないものもあります。その場合には、クリーニングに出すようにしてください。
ウール素材を洗う際の注意点
ウール素材はとてもデリケートなものです。そのため、洗濯する際は十分に注意する必要があります。適切な洗濯方法をしないと、品質が落ちたり、縮んでしまったりということもあるので、ここではウールを洗う際の注意点をご紹介します。
洗濯表示を確認しよう
まずは、衣類についている洗濯表示タグを確認して、水洗いが可能かどうかチェックしましょう。そこに「洗濯マーク」もしくは「手洗いマーク」がついていれば、自宅で洗濯することができます。
「洗濯マーク」「手洗いマーク」がついていない場合には、水洗いは避けてクリーニングに出すようにしましょう。
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ウール素材は決していきなり洗わず、汚れている部分をあらかじめ落としておくようにしましょう。
汚れ部分に中性洗剤の原液をつけ、少しの間漬けておきます。そうすることで、生地を傷つけることなく頑固な汚れも取り除くことができます。
お湯は使用しない
ウールを洗う際には、お湯は使用しないようにしてください。洗濯表示タグの中には、水温が指定されている場合もあります。必ず、その温度よりも低い温度の水を使用して洗い、特に指定がない場合は、水で洗ってくださいね。
脱水の時間を短くする
脱水の時間は30秒以内にしましょう。しっかり水分を飛ばしたいからと、脱水の時間を長くすればするほどシワになりやすくなります。できるだけ短い時間で脱水を行うようにしてください。
おしゃれ着用洗剤を使用する
ウール素材などのデリケートな衣類は、おしゃれ着用洗剤または中性洗剤を使用してください。洗剤の裏面などに「ウール素材の洗濯OK」などの表示があることを確認してから使うようにしましょう。
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カシミヤ
高級素材として有名なカシミヤは、「カシミヤ山羊」からできている素材です。とても柔らかい触り心地で、軽くて暖かいのが特徴です。
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動物園などでも見かけるアルパカの毛も、衣類の素材として使用されています。アルパカはラクダ科の動物であり、97%がファカヤ種で、3%がスーリー種です。
スーリー種で作られた素材は、年間160トンしか生産できないので希少価値が高く、超高級素材となっています。
モヘヤ
カシミヤと同様、高級素材として知られているのがモヘヤです。モヘヤはアンゴラヤギの毛から作られており、とても滑らかな質感で、耐久性にも優れています。モヘヤは紡績に特殊な技術が必要なため、ウール素材よりも生産量が低いとされています。
光沢がとても美しいため、まるでシルクのようだともいわれています。
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キャメルとはラクダの毛のことで、暗褐色で赤みを帯びた毛の色をしています。ラクダの毛の色は漂白しても脱色することができないため、衣類などに使用するときはそのままの色を使用するか、濃い色に染色します。
ラビット
「ラビットファー」などとも呼ばれ、広く知られる素材です。アンゴラウサギ、野ウサギの毛を使用しています。
特にアンゴラウサギは、軽量性と保湿性、吸湿性に優れており、美しい光沢感もあることで、高級素材とされています。ただし、フェルト化しやすいというデメリットもあります。
着心地の良いウール素材でおしゃれを楽しもう
冬が近くなると、ウール素材などを使用した衣類が多く販売されます。羊の毛からできているウールは、保湿性や伸縮性などに優れ、私たちにとって魅力的な特徴を持っています。
しかし、その分お手入れには注意を払う必要があります。他の衣類と一緒にいつも通り洗濯すると縮んでしまうおそれもありますし、毛玉が付いたり、長い間保管するうちに虫に食われたりすることもあるでしょう。
ウール素材は多くのアイテムに使用されていますが、ウール素材のファッションを楽しむ際は、ケアを入念に行ってくださいね。
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