リネン生地といえば、ナチュラルな風合いで涼しげなイメージを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。しかしどうして夏場に活躍することが多いのかご存知ですか?リネン=麻と思いがちですが、実はリネンは麻の種類の一つにすぎません。今回は身近にあるのに意外と知らない「リネン」について、詳しく見てみましょう。
目次
まずはリネンを知ろう!
リネンは英語での呼び名で、フランスでは「リンネル」と呼ばれています。洗うほどに柔らかくなる特性があり、使い込むと味わい深く、触り心地の良い生地へと成長していきます。
そのためビンテージ物のリネンは高価な値がつくこともあります。ヨーロッパではリネンを長く愛用する習慣があり、親から子へと受け継がれることも珍しくはありません。
リネンは麻の種類
「麻」は、もともとアサ科アサ属の木や草から作られた繊維の総称でしたが、、現在はアマ科のリネンなどを含めて「麻」と呼んでいます。日本では20種類以上の麻があります。
リネンはナチュラルな繊維の色で、金色に近いベージュが正しい色のようです。
麻にはほかにも、ラミー(苧麻)やジュート(黄麻)、ヘンプ(大麻草)などの種類があり、それぞれ見た目も性質も異なります。そのため使用される場面も様々なのですが、リネンは肌触りが良いことから身に着けるものによく使用されているのです。
現在日本で「麻」と表示できる種類はリネンとラミーのみと、家庭用品品質表示法で決まっているため、それ以外の麻の種類は植物学名での記載となっています。
リネンの歴史
リネンは人類最古の繊維ともいわれ、その歴史は紀元前8000年頃から始まっています。古代エジプトの神話には、女神イシスがリネンを作ったとされる話もあり、神事でも使用されてきました。
ピラミッドから発見されたミイラに巻かれていたのもリネンといわれており、ほかにもキリスト教では純潔の象徴として、リネンは「聖母マリアの布」とされています。
リネンが繊維用植物として日本に初めて伝来したのは明治7年(西暦1874年)のことで、ロシアに赴任していた榎本 武楊(えのもと たけあき)がリネンの種子を日本へ送ったのがきっかけでした。
ここからリネン栽培は広がり、全盛期には主に軍用素材としてかなりの量を生産していました。やがて戦争が終わるとリネンは衣類繊維や資材として定着していき、格式高いホテルなどのシーツやテーブルクロスには、リネンが使用されるようになりました。
そして現在では誰もが気軽に着ることのできる衣類として、ファッション性にも優れた生地となったのです。
リネンの産地は?
リネンの生産高トップはヨーロッパで、その割合はなんと約90%にまで及びます。そのなかでも断トツの1位はフランスで、フランス人の生活にはリネン生地が欠かせず、町では多くのリネンが販売されています。
リネン素材の製品の原産国表記を見ると、中国と書かれているものをよく見かけますが、これは中国で育てられたリネンということではなく、中国で製品化されていることが多いからです。
中国には湿式紡績という方式で糸を紡ぐ工場が密集していて、その方式がリネンにとてもあっているため、盛んに製造されているという仕組みです。
リネン生地の特徴!メリット・デメリットを解説
リネンの概要が分かったところで、さらに詳しく特徴を見てみましょう。リネンならではの良さと、扱いにくい部分を知ることで、さらにリネンを身に付けやすくなります。
リネンのメリット
肌触りが優しい
リネンの良さはなんといっても、その肌触りの良さです。麻布はゴワついたりチクチクしたりするものが多いですが、リネンはしなやかな肌触りで、使うほどに柔らかくなる繊維です。
これは、リネンに「ペクチン」という成分が含まれているからで、ペクチンはノリの役目を果たし独特のハリやコシを与え、衣類として使用してもさらりと着こなせるようになっています。
吸水性抜群
リネンは吸水性に優れていて、同じく吸水性に優れる綿と比べてもその威力は4倍にもなります。そのおかげで汗をかく夏場に着用していても肌に張りつくことなく、快適に過ごせます。
また、衣類だけでなくハンカチやシーツなどにもリネン生地は最適です。
乾くのが早い
吸水性がある上に、速乾性にも優れています。汗をよく吸ってくれますが、通気性が良いいのですぐに水分を発散してくれます。
じめじめした梅雨の時期でも不快感なく着用できますし、洗濯物の乾きも良いので雑菌が繁殖しにくく嫌な生乾き臭もしにくい生地となっています。
汚れにくく抗菌性に優れる
ペクチンは、汚れからも守ってくれる働きがあります。生地をペクチンでコーティングするイメージなので、汚れがつきにくく、ついたとしてもすぐに落とせます。
繊維自体の抗菌力が高いため雑菌の繁殖もしにくく、カビなどからも守ってくれます。その威力はかなり強く、パンやお餅をリネン生地で包んでおくとカビの発生を抑えることができるほどです。
丈夫な生地
天然繊維は化学繊維に比べて弱いメージですが、天然繊維のなかで最も丈夫なのがリネンです。長く着用すればするほど風合いが出てくるというのは、それだけの期間愛用できるほど丈夫だということです。
また、水分を含むことで強度が増す性質もあるので、洗濯時も傷みにくく気を使って洗う必要がありません。そして洗濯が終わると生地は柔らかくなり、これを繰り返すほどに肌になじむ 生地へとなっていきます。
リネンのデメリット
シワができやすく、とれにくい
リネンは伸び縮みする繊維ではないためシワができやすく、ついてしまったシワは取れにくい性質があります。そのため洗濯の脱水は短時間で終わらせて、シワを伸ばしてから干すと良いでしょう。
ついてしまったシワにはアイロンがけが必要ですが、ファッションによっては逆にシワを楽しむ方法もありますよ。
縮んでしまうことがある
リネンは水に濡れると、粗い目がキュッと引き締まり繊維が縮んでしまうことがあります。コットンも縮みやすい繊維として有名ですが、リネン100%の生地の場合は10%ほど縮んでしまうことがあり、コットンの3~5倍もの割合になることもあります。
洗濯方法を気をつければ縮まないように工夫できますが、どうしても縮みが気になる場合はリネン100%ではなく化学繊維との混合生地を選ぶことをおすすめします。
摩擦による色移りが心配
ペクチンという成分が生地をコーティングしてくれることで、汚れがつきにくい代わりに、染料が入りにくいというデメリットがあり、これが色落ちしやすい原因となります。
特に色の濃いものは色落ちしやすく、白い衣類と擦れたりするだけで色移りしてしまうこともあります。また、洗濯時もほかの衣類との摩擦により色落ちするおそれがあるため、染色されているリネン生地は単体で洗うと良いでしょう。
洗濯物の色移りの落とし方を徹底解説!オキシクリーンなどを使った洗い方や予防法も洗濯による毛羽立ち、白化、脱色があることも
洗濯により色が抜け、白化してしまうこともあるリネンですが、さらには摩擦で毛羽立ちが起こる場合もあります。
生地自体は丈夫で、裂けることなどは少ないですが、生地の表面は繊維が絡まって毛羽立ちしやすいのです。これは天然繊維ならではの性質でもあり、可能な限り丁寧なメンテナンスが必要となります。
リネン生地はこんなときにおすすめ
春夏用の衣類生地
リネン生地は薄手で通気性が良いので、春夏用の衣類として多く使用されています。汗をかいても張り付くことなくすぐに乾くため、真夏にも活躍してくれ、季節感を演出するのにも一役買ってくれます。
混紡されているなら秋もOK
リネン100%の生地は涼しげな印象が強いですが、コットンやウールと混紡されるだけでずいぶん印象が変わります。秋冬物で使用されるウールは暖かみをプラスしてくれ、そこにリネンの光沢感が加わると上品でおしゃれな生地へと様変わりします。
秋にリネンを着用したい場合は、混紡繊維で厚みのある暗めの色を選ぶと良いでしょう。
寝具にも
日本のホテルでは見かけることが少ないですが、ヨーロッパの一流ホテルでは寝具にリネン生地が使われていることがあります。
リネンは寝具のなかでも高級素材という位置づけで、さらりとした肌触りや汗を吸収してすぐに発散させてくれる特性が、枕カバーやシーツにぴったりなのです。
衣類のように夏場だけの使用と思われるかもしれませんが、実はリネンは温度調節できる性能があるので、冬場でも暖かさが保持され、オールシーズン快適に使用することができます。
コットン素材のリネンを使用していた方は、ぜひ一度リネンの寝具も試してみてください。
カーテンにも
リネンはお部屋に取り入れると印象を優しいものに変えてくれますが、そのアイテムとして特におすすめなのがカーテンです。リネンのカーテンは太陽光をナチュラルに取り込み、すがすがしい朝日で目覚めさせてくれたり、午後の穏やかな光でリラックスさせてくれます。
また、カーテンは頻繁に洗うことが難しいので、汚れがつきにくいリネン生地なら通常より少ない洗濯回数でも問題ありません。カーテンは合成繊維のものが多いですが、天然素材に変えると静電気の発生が減り、部屋全体を明るいイメージへと変えてくれますよ。
ただし、リネンのカーテンは化学繊維のものより高価になるので、なかなか手が出しにくいというデメリットがあります。
リネン生地の手入れの仕方と取り扱いポイント
最後にリネン生地を長く愛用できるよう、正しい取り扱いのポイントを見ておきましょう。洗濯や保管方法に注意するだけで、リネンの良さを損なわずに使用し続けることができます。
洗濯時の水は30℃以下で
リネンは水に強く、むしろ水を含むと強度が増しますが、水による繊維の縮みが気になる生地でもあります。できるだけ縮まないようにする工夫として、洗濯時の水温は30℃以下にすることを心がけましょう。
水温が高いと余計に縮みを招いてしまうため、お風呂の残り湯を使って洗濯する際は、お湯が冷めきったことを必ず確認してくださいね。。また、色落ちの心配があるときは中性洗剤を使用して、アルカリ性のものは避けましょう。
脱水はしなくてOK
リネン生地は丈夫なため洗濯機の通常コースで洗いがちですが、通常コースは脱水時間が長い場合が多く、これがリネン生地には良くありません。シワがつきやすい性質のリネンに長時間脱水を行うと、なかなか取れないシワを作り、干すときにたたいたり伸ばすだけではシワを取ることができなくなってしまいます。
生地に負担をかけないようにするには、「おしゃれ着コース」や「スピードコース」などの脱水時間が短いものがおすすめです。また、夏場など洗濯物が良く乾く時期の洗濯ならば、脱水をせずに濡れたまま干してしまうのもリネンには効果的です。
なるべく乾燥機は使用しない
脱水の問題と同様に、シワがつきやすいリネン生地は乾燥機にも向いていません。縮む原因となり、型崩れを起こす可能性が高くなるため、自然乾燥させるようにしましょう。
ハンガーは厚みのあるものを使う
リネンはちょっとした癖ですぐにシワができやすく、ハンガー跡もつきやすい素材です。そのため、リネン用のハンガーはなるべく厚みがあるものにしましょう。
針金ハンガーの様に細いタイプは、肩部分への負担が強くなりすぎてしまいます。
また、シャツなどは特に、ハンガーに吊るした状態でシルエットが決まってしまうので、左右の均等を整えしっかりと伸ばしてから干してください。肩幅のサイズがぴったりのものを選べば、より型崩れがない状態を保てます。
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直射日光を避ける
リネンだけに関わらず、天然素材の繊維は直射日光などの光に弱い傾向があります。室内の電気も、長時間浴びていると色あせや黄ばみの原因になってしまいす。そのため、リネン素材の衣類などは陰干しを心がけ、むやみに光に当てないようにしましょう。
鮮やかに染色されたリネンは特に色落ちが目立ちやすいため、裏返しにして干すことでかなり光対策ができます。
陰干しの効果や方法!生乾き臭を防ぐ4つの対策とおすすめ便利グッズ7選たたみ保管より吊るし保管
リネンは摩擦に弱いため、なるべく擦れない状態で保管することが望ましいです。そのためには吊るし保管がおすすめで、たたんでタンスに重ねて収納というのはできるだけ避けましょう。
たたんだ部分は生地が引っ張られているので負荷がかかります。また、上下にほかの衣類が重なっていると摩擦の影響をかなり受け、生地が痛むだけでなく、シワがつく可能性も高まります。
どうしてもたたむ必要がある場合は、大きめにふんわりとたたみ、一番上に乗せるようにしましょう。吊し保管の場合でもキツキツに詰めるのではなく、隣り合う衣類と間隔を開けることを心がけて保管します。
リネン生地は生活に取り入れたくなる生地
リネンは天然繊維ならではの扱いが難しい部分もありますが、それ以上に身近に置きたくなるメリットがたくさんあることが分かりました。
ナチュラルな風合いが好みの方には特におすすめの生地ですので、衣類だけにとどまらず生活の様々なシーンに取り入れてみてくださいね。